コラム

古民家リノベーションとは?事例付きで解説


日本の伝統的な建築技術が息づく古民家は、近年、新たな住まいの選択肢としても注目を集めています。古民家ならではの魅力を活かしつつ、現代的な設備を取り入れた古民家リノベーションは、資源を有効活用することにもつながる取り組みです。
今回は古民家リノベーションの基礎知識やメリット・デメリット、費用やプロセス、成功のポイントを解説します。株式会社ヒカリでの実際の施行例も紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。

古民家リノベーションとは?

古民家に明確な法的定義はありませんが、一般的には築50年以上経過した伝統的な木造建築を指す言葉です。人々の暮らしの知恵を今に伝える古民家には、新築の家にはない、独特の魅力があります。
まずは古民家リノベーションの基本から、確認していきましょう。

古民家リノベーションとは

古民家リノベーションとは、築年数の経過した伝統的な日本家屋を、現代の生活様式に合わせて改修し、新たな価値を生み出す取り組みです。古い家を修繕するのではなく、建物の持つ歴史的価値や伝統的な建築技術を尊重しながら、現代の暮らしに必要な機能性や快適性を加えていきます。
古い家に詰まった先人の知恵や魅力を活かし、実際に住まいとして活用することで、建物に新たな生命を吹き込むのです。

リノベーションとリフォームの違い

リフォームは、老朽化した部分を修繕し、新築時の状態に近づけることを目的とした工事です。壊れたキッチンを新しくする、傷んだ畳を張り替える、外壁を塗り直すといった、原状回復や機能維持のための改修がリフォームに該当します。
一方、リノベーションは、既存の建物に大規模な工事を施し、用途や機能を変更して新たな価値を生み出す改修です。間取りを大きく変更したり、現代的な設備を導入したりといった、建物の性能向上や用途変更を伴う工事がリノベーションです。
古民家の場合、リノベーションによって性能を大きく向上させることが一般的です。

古民家リノベーションの魅力と特徴

古民家には、現代の一般的な住宅設計とは異なる独特の空間性があります。伝統的な日本家屋は、天井が高く、開放的な造りになっています。土間や縁側といった外との境界部分や、古い木材を使った建物自体に、落ち着きを感じる人も多いでしょう。
リノベーションすることで現代的な利便性を取り入れながら、古い家の良さを感じられるのが、古民家リノベーションの魅力です。
また古民家リノベーションと新築住宅では、それぞれにメリットがあります。新築住宅の主なメリットは、以下の3つです。

  • 最新の建築基準に適合した性能
  • 自由な間取り設計
  • 保証制度の充実

一方、古民家リノベーションには、以下の利点が挙げられます。

  • 建物の持つ歴史的な価値や独特の風情
  • 良質な木材の活用
  • 古い家を再利用することで、資源を有効に使える

さらに土壁は調湿性能に優れ、室内の湿度を自然に調整してくれます。化学物質を含まない自然素材なので、シックハウス症候群の心配もありません。リノベーションでは、こうした古民家の特性を活かせるよう、建材等をこだわるのもいいかもしれません。
伝統的な素材と技術の価値を活かすことで、新築の家とは違った良さを生み出せるのです。

古民家リノベーションでの課題

古い家を再利用する古民家リノベーションでは、耐震・断熱・設備面に不安を感じる人もいるでしょう。
ここでは古民家リノベーションでよくある課題や対策をまとめました。

耐震性能を見直す

古民家の多くは、現行の建築基準法が制定される以前に建てられています。したがって、現代の耐震基準を満たしていないことがほとんどです。伝統工法の木組みには一定の耐震性がありますが、経年劣化や地域によっては基準に満たない場合もあります。
耐震診断を実施し、必要に応じて耐震補強を行いましょう。壁や接続部を補強したり、基礎を強化したりといった施工が必要になるかもしれません。
古民家の風情を損なわないよう、なるべく目立たない部分での補強を工夫できないか、専門家に相談してみましょう。

断熱性能を強化する

一般的に古民家は、夏の暑さを逃がすことを重視した設計になっています。そのため冬の寒さ対策には、強化が必要になるかもしれません。
断熱性能が低いと、冷暖房効率が悪く、光熱費が高くなります。また、室内の温度差が大きくなり、ヒートショックのリスクも高まります。
壁や窓に断熱素材を使用したり、隙間を埋めたりすると良いでしょう。古民家の調湿性を損なわないよう、調整しながら工事を計画してください。

設備・配管の老朽化へ対応する

古民家の水回りや電気設備は、現代の生活水準に対応していないことがほとんどです。キッチンや浴室、トイレなどの設備が古くなっている場合は、新しい設備に取り換えましょう。
特に給排水管や電気配線が老朽化していると、生活にも大きな影響を及ぼします。
住む人にとって最適な暮らし方を考え、ユニットバスやシステムキッチンなど便利な設備を導入し、より快適に暮らせるよう工夫してください。

古民家リノベーションのプロセスとは

古民家リノベーションでは、事前調査から工事完了まで、専門家と相談しながら進めていきます。また予期せぬ木材の腐食やシロアリ被害などが見つかって追加の工事や費用が発生することもあります。時間や予算には余裕をもって、計画を立てていきましょう。
古民家リノベーションの基本的なプロセスや費用の目安をまとめました。

①現地調査を行う

まずは、建物の現状を正確に把握します。専門家に詳細な現地調査と建物診断を依頼し、構造の状態や劣化の程度、改修の可能性を評価します。
また耐震診断を行い、現行基準に対してどの程度の性能があるかを評価します。診断結果に基づいて、必要な補強の内容を決めていきましょう。
なお調査結果によっては、想定以上の補修が必要になったり、思ったよりも良好な状態であったりすることがあります。

②改修計画を立てる

建物の状態が把握できたら、どんな住まいにしたいか、具体的な計画を立てていきます。古民家の魅力を活かしながら、現代的な設備や機能をどの程度取り入れるか考えましょう。
改修計画では、間取りの変更や水回りの配置、収納計画なども検討します。仕上げの材料や水回りの設備は色々な種類がありますので、比較しながら進めるのがおすすめです。

③施工を開始する

設計が完了したら、いよいよ施工に入ります。古民家リノベーションでは、まず既存部分の解体や撤去から始まります。この段階で、図面では見えなかった問題が発見されることもあります。
また古い部材と新しい部材を調和させながらの施工は、伝統工法に精通した職人の技術が必要になる場面があるかもしれません。特殊な造りの古民家や歴史的な価値のある建物では、事前に施工業者と確認しておきましょう。
なお増築を伴う場合や構造を大きく変更する場合、用途変更を伴う場合などは、別途申請が必要です。

④引き渡し

工事が完了したら、設計図通りに施工されているか、設備が正常に機能するかなどを確認します。問題がなければ、鍵の引き渡しとともに、設備の使用方法やメンテナンスの注意点などの説明を受けましょう。
引き渡し後も、定期的なメンテナンスが必要です。特に古民家は、木材の経年変化や季節による変動があるため、こまめな点検と手入れが重要になります。

費用の相場とスケジュールの目安

古民家リノベーションの費用は、建物の状態や工事内容によって大きく異なりますが、それまで人が住んでいた古民家のリノベーションであれば、数百万円で済むこともあるようです。
一方雨漏りがしているようなボロボロの状態の古民家や、すべてスケルトンにして建て直すようなケースでは、数千万円の費用がかかります。
自治体の補助金や助成金を活用できる場合もあるので、窓口やインターネットで、支援制度を確認してみましょう。
また工事期間は、一般的には3ヶ月から1年程度です。

古民家リノベーション成功の秘訣はコンセプト設計が鍵

古民家リノベーションでは、「どんな家にしたいか」「どんな暮らし方が理想か」といったコンセプト設計が重要になります。
できるだけ古民家の雰囲気を残したいのか、外観だけ残して中は近代化したいのか。完成後の家のイメージや雰囲気を最初に明確にしておくと、プランやデザインのご相談もスムーズに行えます。
たとえばリノベーションでは、以下のようなコンセプトテーマが挙げられます。

伝統的な日本家屋スタイル

古民家の風情をそのまま活かし、畳、障子、襖といった伝統的な要素を大切にします。落ち着いた和の空間で、四季の移ろいを感じながら暮らせます。

ジャパニーズモダン

伝統と現代を融合させたスタイルです。古民家の構造美を活かしながら、モダンな家具や照明、シンプルな内装を組み合わせます。和の落ち着きと現代的な洗練さが共存する空間になります。

ミニマリズムのアプローチ

余計な装飾を削ぎ落とし、木や土といった素材の美しさを際立たせます。シンプルで清潔感のある空間は、心を落ち着かせてくれます。

また家族構成や仕事のスタイル、将来の計画なども考慮しましょう。将来のバリアフリー化も視野に入れるのがおすすめです。
住む人みんなが快適に暮らせる空間をデザインしてください。

香川の古民家リノベーションの事例紹介

ここでは、株式会社ヒカリが手がけた香川県内の古民家リノベーション事例を紹介します。それぞれの事例から、古民家の魅力を活かしたリノベーションのアイデアを見ていきましょう。

事例1 伝統美と現代の快適性を両立

以前は別荘として使われていた海辺の日本家屋を、リノベーションしました。木造の美しい架構を表し、柔らかな間接照明で、落ち着いた雰囲気を演出しています。
開放的な間取りは、日本古来の建物ならでは。
一方水回りは近代的な設備を取り入れ、使い勝手よく、生活しやすい環境を整えました。

「古民家の架構の美しさを活かした家」の詳細はこちら >>


事例2 古き良き形と新しい価値観を融合

おじいさんとおばあさんから受け継いだお家を、お孫さんご夫婦が住めるようにリノベーションしました。印象的な瓦屋根の外観を残しつつ、家の中にはご夫婦の好きなテイストを取り入れています。
玄関廻りや和室廻りの仏間、床の間、欄間などはそのままの形で残しました。昔ながらの設えと、新しいデザインが融合したリノベーション例です。

「昔ながらの日本家屋を現代風にアレンジ」の詳細はこちら>>



古民家リノベーションで未来へつなげる


古民家に使われている良質な木材は、適切に手入れすれば何百年も使い続けられる貴重な資源です。これを活かすことは、森林資源の保護と循環型社会の形成につながります。
さらに地域活性化の観点からも、古民家リノベーションは重要な役割を果たします。空き家となっていた古民家が再生されることで、地域の景観が保たれ、歴史的な街並みが次世代に継承されるのです。

住居だけでなく、カフェやゲストハウス、コワーキングスペースなど、古民家を活用した事業も増えています。

都市部を離れて地方で暮らす選択肢が一般化した今、古民家リノベーションは、こうした新しいライフスタイルの受け皿として、未来の住まい方の可能性を広げているのです。

まとめ

古民家リノベーションは、歴史ある建物の魅力を活かしながら、現代の暮らしに必要な快適性と機能性を実現する取り組みです。
しかし新築住宅にはない独特の風情がある一方、設備や性能に不安を感じることもあるでしょう。専門家と相談を重ね、暮らしのコンセプトを明確に持つことで、より満足感の高いリノベーションが可能になります。
香川で古民家リノベーションをお考えなら、株式会社ヒカリにお任せください。ヒカリのリフォームでは、住まわれる方のイメージを形にし、生活スタイルに合わせてご提案いたします。どうぞ、お気軽にご相談ください。


AZUSA
監修一級建築士 AZUSA

大学卒業後、㈱ヒカリへ入社。住宅の現場監督として7年間、新築・リフォーム・リノベーション現場を経験。その後営業課・積算課を経て、現在は今までの経験を活かし住宅リノベーション・リフォームのプラン作成~積算業務を担当。31歳のときに1級建築施工管理技士、32歳のときに一級建築士を取得。
趣味は旅行で、夢は都道府県すべてに旅行すること。

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