平均寿命が延びた昨今、健康なうちから「老後を快適に過ごす住まい」を考える人が増えています。介護が必要になってから慌ててリフォームするのではなく、元気なうちに計画的に住環境を整えると、長く安心して暮らせる家になりますよ。
段差解消や手すりの設置、広い動線の確保、使いやすい浴室やトイレへの改修など、バリアフリーリフォームにはさまざまな要素があります。費用も気になりますよね。
今回は自分の老後に備えるバリアフリーリフォームについて、費用の目安や施工例、具体的にを解説します。バリアフリーリフォームを成功させるポイントも紹介するので、参考にしてください。

バリアフリーリフォームとは？自分の老後の暮らしを守る工夫

バリアフリーリフォームとは、高齢者や身体が不自由な方でも安全で快適に暮らせるよう、住まいの障壁（バリア）を取り除くリフォームのことです。親世代の高齢化だけでなく、自分自身の将来の生活への備えとして、バリアフリーリフォームを検討する人が増えています。
まずはバリアフリーリフォームの基本や、意義を見ていきましょう。

バリアフリーリフォームの基本

バリアフリーリフォームでは、主に以下の施工を行います。

• 段差の解消
• 手すりの設置
• 広い動線の確保
• 使いやすい設備への交換

日常生活での不便や、危険を減らすための工夫が中心になります。

特に重要なのが、段差解消です。高齢になると、わずか数センチの段差でもつまずきやすくなります。転倒は、骨折などの重大な怪我につながるかもしれません。また車椅子生活になったときも、小さな段差が生活のストレスになりかねません。
家の中には玄関の上がり框、部屋と廊下の境目、浴室の出入り口など、意外と多くの段差が存在します。これらを解消することで、転倒事故を未然に防ぎ、歩行器や車椅子での移動もスムーズになります。
さらに廊下や出入り口が狭いと、歩行器や車椅子が通れず、介護が必要になったときにも不便です。将来を見据えて、十分な幅を確保しておきましょう。

「住み慣れた家で安心して暮らす」ためのリフォームを

多くの方が、できるだけ長く住み慣れた家で暮らしたいと願っています。しかし、加齢とともに身体機能が低下すると、今まで問題なく過ごせていた家が不便で危険な場所になってしまいますよね。ちょっとした段差や階段、使いにくい浴室やトイレが、日常生活の大きな障害になります。
バリアフリーリフォームは、住み慣れた家で安心して暮らし続けるための投資です。介護が必要になる前に環境を整えておくことで、身体機能が低下しても自立した生活を維持できます。家族の介護負担も軽減されるので、在宅での介護も容易になるかもしれません。
愛着のある家、思い出の詰まった家で、最期まで安心して過ごしたいと考える人には、バリアフリーリフォームがおすすめです。

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バリアフリーリフォームの費用相場のと考え方

バリアフリーリフォームの費用は、工事の内容や範囲によって大きく異なります。部分的なリフォームであれば、比較的少額で済みますが、全面的なリフォームになると数百万円かかることもあります。
部分ごとのリフォーム費用相場の目安は、以下のとおりです。

手すりの設置は、1か所あたり数万円程度です。とはいえ、手すりをつけたほうがいい場所は家中にあります。廊下や階段、トイレ、浴室など、必要な場所に複数設置するなら、数十万円程度を見積もっておくとよいでしょう。

段差解消には、スロープの設置や床のかさ上げなどの方法があります。特にスロープは、材質によって価格が倍近く違うことも。必要に応じて、専門家に相談しましょう。また玄関の段差解消には、式台や昇降機を設置する方法もあります。

浴室のリフォームは、手すりをつけたり、浴室の床を滑りにくい素材にしたりする工事があります。
浴槽を交換したり、入口の段差解消したい時には大がかりなリフォームになるため、既存の浴室をバリアフリー対応のユニットバスに交換するほうが良い場合もあります。バリアフリー対応のユニットバスは、費用が高額になる一方で、安全性を高める設備が標準装備されています。どちらがよいかは、費用やユニットバスが設置できるかどうかによっても異なります。

トイレのリフォームは、便器の交換と手すりの設置で数十万円程度かかります。室内のスペースを広げる場合には、間取り変更の工事が必要です。家全体のおおがかりなリフォーム時に、あわせて検討するのもおすすめです。

全面的なバリアフリーリフォームでは、家全体を見直すことになります。建物を一度骨組みに戻すスケルトンリフォームなら、間取りなどの大きな変更も可能です。ただし費用はかなり高額になります。
部分的なリフォームは初期費用を抑えられますが、後から追加工事をすると、結果的に高くつくかもしれません。一方全面的なリフォームは一度に費用がかかりますが、統一感のある仕上がりになり、長く、安心して住める住居になります。
健康なうちに、計画的に全面改修を行うことで、最終的なコストパフォーマンスも高くなります。

バリアフリーリフォームでの段差解消の具体的な事例とは

実際のバリアフリーリフォームでは、場所によって施工方法が異なります。ここでは段差の解消を例に、具体的な施工の事例をまとめました。

玄関の段差解消

玄関は家の中で最も段差が大きい場所です。スロープを設置し、緩やかな傾斜で上り下りができるようにしましょう。
また、式台を設置する方法もあります。式台とは、段差を2段に分けるための踏み台です。1回の昇降幅を小さくすることで、足腰への負担を軽減します。手すりと組み合わせることで、さらに安全性が高まります。

室内の段差解消

部屋と廊下、部屋と部屋の境目にある敷居の段差は、つまずきの原因です。床のかさ上げや敷居の撤去によって、フラットな床にすることで、転倒リスクを大幅に減らせます。
特に和室は廊下より一段上げて敷居の高さに揃えて施工するのが一般的だったため、2〜3センチ程度床が高くなっています。
和室の床を下げるのはかなり費用が掛かるため、ほかの部屋との高さを見ながらですが、廊下側の床をかさ上げするのも一つの方法です。
段差を解消することで、車椅子や歩行器でも移動しやすくなりますよ。

浴室の段差解消

浴室の出入り口には、脱衣所に浴室の水を流れ込ませないために段差が設けられていることが多く、高齢者にとって危険な場所です。床のかさ上げで段差を塞ぐとよいでしょう。
また浴槽のまたぎ部分の高さも重要です。高すぎると足を上げるのが大変で、転倒の危険があります。浅型の浴槽やまたぎやすい形状の浴槽に変えることで、安全に入浴できます。

トイレの段差解消

トイレの出入り口に段差がある場合は、床をかさ上げしてフラットにします。
車椅子での出入りや介助を考えると、トイレ内のスペースにも余裕が必要です。狭い場合は、壁を移動して広げることも併せて検討しましょう。

段差解消以外にもある！老後に備える人気のバリアフリーリフォームのポイントは？

たとえば手すりの設置は、最も基本的で効果的な対策です。移動や立ち座りが楽になり、転倒を防げます。

また、床材を滑りにくいものに変更することもおすすめです。特に水廻りは滑りやすいので、浴室や洗面所には滑り止め効果のある床材を選びましょう。クッションフロアは柔らかく足に優しい素材で、万が一転倒しても衝撃を和らげる効果があります。

ドア（開き戸）から引き戸への変更も、利便性を大きく高める改修です。開き戸は開閉時に体を動かす必要があり、車椅子や歩行器では使いにくいものです。引き戸なら少ない力で開閉でき、開口部も広く取れるため、車椅子での通行がスムーズになります。

さらに家全体の断熱性能をあげることも、高齢化を見据えたリフォームのひとつです。大きな温度差は、ヒートショックの原因になります。暖かい部屋から寒い浴室や脱衣所に移動することで、血圧が急激に変動し、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすのです。断熱性を高めることで、家全体を快適な気温に整えられます。
断熱改修によって、部屋ごとの温度差を小さくすることで、ヒートショックのリスクを大幅に減らせます。浴室暖房や脱衣所の暖房を設置することも効果的です。

生活習慣や家の間取りにあわせて、バリアフリーリフォームを検討しましょう。

バリアフリーリフォームに使える補助金・助成制度

要支援・要介護の認定を受けている方が、バリアフリーや手すりの設置などの住宅改修工事を行う場合、介護保険の助成を受けることができます。
介護保険では、保険の対象となる工事にかかった費用に対し、最高20万円までが助成の対象です。自己負担は1～3割が上限となります。
また国や自治体でも、バリアフリー化や省エネのリフォームに補助金や減税制度が設置されていることがあります。補助金や助成金の申請は、自治体の窓口等で行います。まずはどんな制度が活用できるのか、相談してみましょう。
ただし補助金・助成金には、年度ごとに予算の上限があります。募集期間も限られているので、早めに準備を行ってください。

バリアフリーリフォーム成功のポイント

バリアフリーリフォームのポイントは、以下の3つです。

1.ケガを予防する
敷居等のちょっとした段差での転倒が原因で、骨折や寝たきり等になることもあります。事故を予防するリフォームが大切です。

2.自立する心をサポートする
歳を重ねると、できないことが増えていきます。リフォームによって自分でできる事が増えれば、日常の行動範囲が広がり、健康的な生活のサポートにもつながります。

3.家族のゆとりを考える
介護は当事者だけでなく、介護する家族にとっても大きな問題です。バリアフリーリフォームを施すことで、家族や介助者の心身の負担を軽減することができます。

バリアフリーのリフォームで大切なのは、将来を想定して設計することです。今は元気でも、将来のことはわかりません。歳を重ねると、思わぬ不便が出てくることもあります。
その都度追加工事を行うのでは、費用も工期も、住まいの負担も大きくなるばかりです。できるだけ将来のことを具体的に考え、大きな変更をしなくて済むようなリフォームを目指しましょう。
廊下や出入り口は、歩行器や車椅子を使う可能性を考えて、幅を広めに確保しておくと安心です。今は階段の上り下りに問題がなくても、将来的に1階だけで生活できるよう、1階に寝室やトイレを配置するのもおすすめです。
また家族構成の変化も考慮すべきポイントです。配偶者や子どもが介護する場合を想定し、介助しやすい動線や設備配置を計画します。
専門家のアドバイスを受けながら、長期的な視点で計画を立てることが、後悔しないリフォームにつながります。

バリアフリーリフォームで老後の安心を手に入れる

バリアフリーリフォームは、自分の老後を快適で安全に過ごすための大切な投資です。段差解消、手すりの設置、使いやすい浴室やトイレへの改修などをすることで、住み慣れた家で長く暮らし続けることができます。
費用は工事内容によって異なりますが、介護保険や自治体の補助金を活用することで、経済的な負担を軽減できます。健康なうちから計画的にリフォームすることで、将来の不安を解消し、安心して老後を迎えられます。
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