コラム

耐震性を高めるリノベーションとは?耐震補強工事も同時に行うことで安心とデザインを両立する住まいづくりを解説


日本は、地震大国です。いつどこで大きな地震が起きてもおかしくありません。特に南海トラフ巨大地震が発生した場合、香川県でも大きな揺れや津波の発生が予測されています。

大地震から家族の命と財産を守るため、災害対策のひとつとして、住まいの耐震性を高める耐震リノベーションも検討しましょう。

今回は耐震リノベーションの基礎知識や実施すべきタイミングなどを詳しく解説します。

耐震リノベーションとは?

耐震リノベーションとは、既存の住宅に耐震補強工事を行いながら、住まい全体の性能と快適性を向上させる総合的な改修工事のことです。

従来の耐震補強工事は構造の強化だけを目的としていましたが、耐震リノベーションでは安全性の向上に加えて、現代の暮らしに合わせた機能性やデザイン性も同時に実現します。一度にまとめて施工することで、工期の短縮やコストの削減が叶うだけでなく、生活への影響も最小で済むのがメリットです。
また壁や床を解体する際に構造部分の状態を確認できるので、より的確な補強計画が立てられます。

木造住宅は適切な構造であれば地震の揺れを吸収する柔軟性を持ちますが、経年劣化や設計の不備があると大地震で倒壊する危険性があります。

特に1981年5月までの旧耐震基準で建てられた住宅は、現在のように、非常に強い揺れを想定した強度設計ではありません。耐震リノベーションでは、旧基準の住宅の安全性を高めるためにも役立ちます。

耐震リノベーションを行うタイミング

住まいの築年数は、耐震性を判断する重要な目安です。古い住宅は最新の耐震基準に達していないケースも多くあります。リノベーションを検討する際には、耐震補強も同時に行うとよいでしょう。

耐震リノベーションを行うとよいタイミングは、以下のとおりです。

  • 築年数が経過し、建物が古くなったとき
  • 住居のリフォームを行うとき
  • 災害対策を強化したいと思ったとき
  • 家族構成が変わったとき

また子どもの独立や高齢の親との同居などライフステージの変化により間取り変更を検討しているときなども、あわせて耐震リノベーションを行うチャンスです。
特に高齢者がいる家庭では、避難しやすい家づくりという視点もあるとよいでしょう。

地震はいつ起きるかわかりません。住まいについて考えるタイミングがあれば、耐震リノベーションについても話し合いましょう。

耐震リノベーションの方法

耐震リノベーションでは、まずは耐震診断を行います。診断結果にあわせて、必要な補強工事等を行う流れです。
ここでは耐震リノベーションの具体的な方法を見ていきましょう。

耐震診断の重要性

耐震リノベーションを行う前に、まず現在の住まいの耐震性を正確に把握しましょう。耐震診断は、住宅の構造や劣化状況を調査し、地震に対してどの程度の安全性があるかを評価する専門的な検査です。図面や実際の建物を確認・調査し、構造計算などを行って、総合的に耐震性能を判定します。

主な流れは、以下のとおりです。

1. 調査

まず予備調査として、図面の確認や簡易的な現地調査を行います。
その後、本格的な現地調査で床下や小屋裏も含めた詳細な調査を実施します。

2.評点を算出

調査結果をもとに構造計算を行い、評点を算出します。
評点1.5以上が「倒壊しない」、1.0〜1.5が「一応倒壊しない」、1.0未満が「倒壊する可能性がある」とされている数値です。

3.報告書の提出

最後に、診断結果と必要な補強内容をまとめた報告書が提出されます。

壁の量と配置のバランスや柱・梁の接合部の状態、劣化や損傷の有無などがチェックされます。

なお1981年、建築基準法が改正されました。それまでの旧耐震基準は震度5強程度の地震に耐えることを目標としていましたが、改正後の新耐震基準では震度6強から7程度の地震でも倒壊しないことが求められています。
さらに2000年6月の改正では、木造住宅の接合部に金物を使用することが義務化されました。耐震診断では、こうした基準の変化に則った設計が成されているかも確認されます。
また診断では、壁の厚み不足や配置バランスのほか、土台や柱の腐朽やシロアリ被害が発見されることもあります。住まいをより快適に、安全に改築するためにも、重要な診断なのです。

リノベーションでの具体的な耐震補強工事とは

耐震リノベーションでは、耐震診断の結果をもとに、必要な補強工事を計画します。
具体的には、以下のような工事を行います。

■強い壁を増やす

建物の耐震性能を高める基本は、地震の横揺れに耐える「耐力壁」をバランスよく配置することです。
柱・梁だけでは地震の力に抵抗できない場合、窓などの開口部を減らしたり、構造用合板を張ったりして、強い壁(耐力壁)を増やし、建物全体のバランスを整えます。

■屋根を軽くする

屋根が重いほど、地震の際に建物へかかる力(慣性力)が大きくなります。
屋根を軽くすることで 建物に作用する地震の力が減り、大地震時に壊れにくくなります。

■基礎を補強

地震の力はまず基礎部分に伝わるため、劣化やひび割れがある基礎を補強することが非常に重要です。
基礎に問題や損傷がある場合には、補強した耐力壁に見合った強度が必要なため、底版コンクリート打ちや、基礎立上り部分の増し打ちなどの方法で基礎補強を行います。

■ 結合部を補強

柱・梁・土台といった主要構造材の「結合部」は、地震の揺れで最も力が集中する部分です。この接合部が弱いと、建物全体の耐力が発揮されず、倒壊の原因になります。 柱・梁・筋かいなどの接合部は、専用の金物等を使ってしっかり固定します。

こうした補強は、住まいの状況に応じて組み合わせて実施するものです。耐震診断の結果と予算を考慮して、優先順位をつけて進めていきましょう。

また耐震のポイントは、以下の3つです。

■修繕の出費を減らす

耐震化を行うことで、地震による住宅の損傷を大幅に軽減できます。構造体の強度が高まると、壁のひび割れや屋根の崩落、基礎の損傷といった被害が最小限に抑えられ、結果として修繕や再建にかかる費用を大きく削減することが可能です。

また、被害が軽度で済むことで保険の申請手続きや工期の長期化といった二次的な負担も軽減され、経済的にも精神的にも余裕を持って災害後の生活再建に取り組むことができます。

■避難ができる

耐震性の高い住宅は、倒壊や家具の転倒による被害を防ぎ、家族が安全に避難するための「時間」と「経路」を確保します。特に夜間や高齢者・子どもがいる家庭では、数十秒の違いが命を左右することもあります。
建物の構造を補強し、耐力壁や接合部を強化することで、揺れに耐えうる「避難のための安全空間」を守ることができます。

■被災後も生活ができる

耐震化された住宅は、地震後も倒壊や大きな損傷を避けることができるため、自宅での生活を継続できる可能性が高まります。避難所での生活は、プライバシーや衛生環境の確保が難しく、特に長期化すると心身への負担が大きくなります。

被災後も電気や水道などのライフラインが一部機能していれば、耐震化住宅では「自宅避難」が現実的な選択肢となり、家族の安心と生活の質を守ることにつながります。

地震で被災した際には、避難生活を余儀なくされます。自宅が住める状態にあれば、精神的にも安心して過ごせるでしょう。
株式会社ヒカリでは、修繕時だけでなく、被災時・被災後も安心できる耐震リノベーションを行います。

耐震補強とは >>

リノベーションで快適性も同時に向上

耐震リノベーションでは、補強工事と併せて、住まいの快適さを向上させる改修を行う場合もあります。

構造から見直すリノベーションでは、断熱性能を向上させて快適性と省エネ性に貢献したり、現在のライフスタイルに合わせて大幅な間取りの変更が行いやすいため、より暮らしやすい空間に作り変えることも可能です。耐震補強工事と同時に施工を進めることで、工程や期間が短縮され、効率的で経済的なリノベーションが実現できるのが特徴です。

快適な住居は、安全であるだけでなく、時代や暮らしにあった建物であることが必要です。耐震補強工事を検討する際は、家が現在の暮らしとマッチしているかどうかも見直しましょう。

耐震強度だけでなく、デザイン性と利便性も改善させることで、これからも長く住み続けられる理想の住まいとなるのです。

耐震リノベーションの費用

耐震補強工事の費用は、建物の状態や必要な補強の内容によって大きく異なります。

一般的な木造住宅では、平屋建ての場合で100万円~150万円程度が目安です。ただし、劣化が進んでいたり、基礎や屋根など大規模な補強が必要な場合は高額になる場合もあります。
耐震リノベーションの金額は、どこまでの範囲を補強するかによって大きく変わります。部分補強であれば比較的低コストで対応可能ですが、全体補強を行うとなると高額になります。また、住宅の構造によっても、広報や資材が異なるため費用に差が生じます。

国や自治体では、耐震診断と耐震補強工事に活用できる補助制度を設けている場合があります。制度内容の内容や補助金額等は年度ごとに変更されることが多いので、まずは公式サイトや自治体の窓口で、最新の情報を確認しましょう。

補助金も上手に活用することで、リノベーションの費用負担を軽減することができます。

耐震リノベーションの施工事例

ここでは株式会社ヒカリが行った、施工事例を見ていきましょう。

T様邸は、築年数の経過した木造住宅です。まず耐震診断を実施し、現状の耐震性能を評価しました。
お客様が実際に生活している住居への施工でしたので、できるだけ負担のかからないよう、1部屋ずつ養生しながら進めることに。修繕範囲が小さい押入れなどで補強を行うことで、生活への影響を最小限に抑えました。
まず既存の仕上げ材を撤去して柱が見える状態にします。次に、土台と柱、柱と梁を金物で補強し、地震の際に抜けてしまうのを防ぎました。さらにアルミアングルを柱に取り付け、構造用合板を取り付けます。最後に仕上げ材のシナベニヤや元々ついてあった棚板やハンガーパイプを復旧して、完了です。
この方法では天井、床を傷めずに補強ができるので、補強工事にかかる費用も抑えられました。

「T様邸 耐震診断・補強工事」の詳細はこちら >>



株式会社ヒカリでは、お客様のご希望にあわせて、ご負担の少ない施工を実施いたします。「できるだけ、見た目を変えないで」「大きなリノベーションも一緒に行いたい」など、住まいの理想をお伝えください。


リノベーション後も地震対策を


耐震補強工事で建物の強度を高めても、地震発生時の被害を最小限に抑えるためには、日常的な地震対策が欠かせません。

地震による死傷者の多くは、家具の転倒や落下物が原因です。タンスや本棚、食器棚などの大型家具は、必ず壁に固定しましょう。L字金具やつっぱり棒、ストッパーなど、複数の方法で固定すると効果的です。またテレビや電子レンジなどの家電製品も、耐震マットや固定ベルトで転倒を防ぎます。

さらに寝室には背の高い家具を置かない、ベッドや布団の近くに倒れやすいものを置かないなど、就寝中の安全にも配慮してください。

あわせて、地震後のライフライン停止に備え、飲料水や非常食などの備品も用意します。家族の連絡手段や避難場所も確認し、定期的に避難訓練を行いましょう。
家も人も、定期的に備えを見直し、状況を改善しておくことが重要です。


まとめ

耐震リノベーションは、住まいの安全性を高めながら、快適性やデザイン性も向上させる住まいづくりの方法です。リノベーションを行う際に、耐震補強も同時に行うことで、コストを抑えながら効率的に安全性を確保できます。

香川で耐震リノベーションをお考えなら、株式会社ヒカリにお任せください。暮らしに寄り添う、理想の住まいづくりのお手伝いをいたします。

耐震診断から補強計画のご相談はもちろん、アフターフォローまで、トータルでサポート。大切な家族を守る安全な住まいづくりを、一緒に考えていきませんか。まずはお気軽にご相談ください。


AZUSA
監修一級建築士 AZUSA

大学卒業後、㈱ヒカリへ入社。住宅の現場監督として7年間、新築・リフォーム・リノベーション現場を経験。その後営業課・積算課を経て、現在は今までの経験を活かし住宅リノベーション・リフォームのプラン作成~積算業務を担当。31歳のときに1級建築施工管理技士、32歳のときに一級建築士を取得。
趣味は旅行で、夢は都道府県すべてに旅行すること。

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